2025年は税制改正により「103万円の壁」が「123万円の壁」に変更され、さらに2026年1月からは本人の所得税非課税ラインが「178万円の壁」へと拡大されます。この記事では、扶養控除と配偶者控除の違いと、最新の税制改正情報を詳しく解説します。
2025年〜2026年の税制改正:何が変わった?
2025年12月施行の改正内容
令和7年度税制改正により、基礎控除と給与所得控除が引き上げられました。主な変更点は以下の通りです。
基礎控除の引き上げ
- 改正前:48万円(一律)
- 改正後:最大95万円(所得金額に応じて段階的に設定)
給与所得控除の引き上げ
- 改正前:最低55万円
- 改正後:最低65万円
扶養親族・配偶者の所得要件
- 改正前:合計所得金額48万円以下(給与収入103万円以下)
- 改正後:合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)
出典: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
2026年1月からの追加改正:178万円の壁
2025年12月18日、高市早苗首相と国民民主党の玉木雄一郎代表が会談し、所得税の非課税枠「年収の壁」を178万円に引き上げることで正式合意しました。
178万円の壁とは 2026年1月から、年収178万円まで所得税が非課税になります。これは2025年12月19日に与党税制改正大綱で正式決定された新しい壁です。
基礎控除99万円(95万円+4万円上乗せ)+ 給与所得控除69万円(65万円+4万円)= 178万円
▶︎重要な注意点:123万円の壁と178万円の壁は別物
ここで注意が必要なのは、123万円の壁と178万円の壁は全く別の制度だということです。
- 123万円の壁:配偶者控除・扶養控除が受けられる上限(扶養する側に影響)
- 178万円の壁:本人に所得税がかからない上限(本人に影響)
年収が123万円を超えると、配偶者や扶養者(親など)が配偶者控除・扶養控除を受けられなくなります。その結果、世帯全体の税負担が増加します。
つまり、配偶者や子どもの年収が123万円を超えると、本人には所得税がかからなくても(178万円まで)、扶養している側は控除が受けられなくなるのです。
出典: 日本経済新聞「年収の壁178万円へ引き上げ」、国税庁資料
扶養控除とは?
扶養控除は、納税者が生計を共にする親族を扶養している場合に受けられる所得控除です。
扶養控除の対象となる条件(2025年改正後)
扶養親族の合計所得金額の要件は58万円以下(改正前は48万円以下)となりました。扶養親族として認められるためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 親族関係:配偶者以外の6親等内の血族と3親等内の姻族
- 生計要件:納税者と生計を共にしていること(同居・別居問わず)
- 所得要件:2025年は合計所得金額58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)
- 年齢要件:その年の12月31日時点で16歳以上
- 他の控除非適用:青色事業専従者や白色事業専従者でないこと
出典: 国税庁「No.1180 扶養控除」
扶養控除の控除額(2025年)
扶養親族の年齢や同居状況により、控除額が異なります。
| 区分 | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) |
|---|---|---|
| 一般の扶養親族(16歳以上18歳以下) | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 | 45万円 |
| 一般の扶養親族(23歳以上70歳未満) | 38万円 | 33万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・別居) | 48万円 | 38万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居) | 58万円 | 45万円 |
2025年新設:特定親族特別控除
居住者が特定親族を有する場合には、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて最高63万円を控除する特定親族特別控除が創設されました。
制度の概要
- 対象:19歳以上23歳未満(大学生年代)の親族
- 年収範囲:123万円超~150万円以下(合計所得58万円超~100万円以下)
- 控除額:最大63万円から段階的に減少
これにより、大学生がアルバイトで123万円を超えても150万円以下であれば、親は引き続き控除を受けられます。
出典: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
配偶者控除とは?
配偶者控除は、納税者に所得の少ない配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。扶養控除とは別の制度として設けられています。
配偶者控除の対象となる条件(2025年改正後)
配偶者控除を受けるためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 婚姻関係:民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 生計要件:納税者と生計を共にしていること
- 所得要件:配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入123万円以下)
- 青色専従者等でないこと:青色事業専従者や白色事業専従者でないこと
- 本人の所得制限:納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
配偶者控除の控除額(2025年)
納税者本人の所得金額によって控除額が異なります。
| 納税者本人の合計所得金額 | 控除対象配偶者(70歳未満) | 老人控除対象配偶者(70歳以上) |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
注意: 納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除は受けられません(この上限額は2025年改正でも変更なし)。
配偶者特別控除とは?
配偶者特別控除は、配偶者の所得が配偶者控除の対象を超えた場合でも、一定の範囲内であれば控除を受けられる制度です。
配偶者特別控除の適用条件(2025年)
- 配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下(給与収入123万円超201.6万円未満)
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
- 配偶者が他の人の扶養親族になっていない
2025年の重要な変更点
配偶者特別控除の満額適用ラインが150万円から160万円へ引き上げられました。
改正のポイント
- 改正前:配偶者の年収150万円以下で満額38万円の控除
- 改正後:配偶者の年収160万円以下で満額38万円の控除
配偶者の給与収入が160万円以下であれば、納税者本人の税金負担は増えません。
出典: マイナビバイト「123万円の壁は意味ない?」、三菱UFJ銀行「配偶者控除・配偶者特別控除とは」
配偶者特別控除の控除額
配偶者の所得金額と納税者本人の所得金額によって控除額が段階的に減少します。詳細は国税庁のホームページでご確認ください。
扶養控除と配偶者控除の5つの違い
1. 対象者の違い
扶養控除
- 配偶者以外の親族(子ども、両親、祖父母、兄弟姉妹など)
- 6親等内の血族と3親等内の姻族
配偶者控除
- 民法上の配偶者のみ(夫または妻)
- 内縁関係は対象外
2. 年齢制限の違い
扶養控除
- 16歳以上という年齢制限あり
- 年齢区分により控除額が変動(一般・特定・老人)
配偶者控除
- 年齢の下限制限なし
- 70歳以上は老人控除対象配偶者として控除額が増額
3. 本人の所得制限
扶養控除
- 納税者本人の所得制限なし
配偶者控除
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下という制限あり
- 900万円を超えると控除額が段階的に減少
4. 所得要件(2025年)
共通点
- 両制度とも対象者の合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)
相違点
- 配偶者には配偶者特別控除という段階的控除制度あり(所得58万円超133万円以下)
- 扶養には19歳~22歳限定の特定親族特別控除あり(所得58万円超100万円以下、年収150万円以下)
5. 控除額の違い
扶養控除
- 一般:38万円
- 特定(19~22歳):63万円
- 老人:48万円~58万円
配偶者控除
- 一般:38万円
- 老人:48万円
- 本人の所得により26万円、13万円に減額
2025年〜2026年「年収の壁」完全早見表
税制改正により、様々な「年収の壁」が変更されました。それぞれの壁の意味を正確に理解することが重要です。
| 年収の壁 | 内容 | 対象 | 2025年〜2026年の変更 |
|---|---|---|---|
| 106万円 | 社会保険加入義務(従業員51人以上の企業) | 本人 | 2026年10月に賃金要件撤廃予定 |
| 110万円 | 住民税の非課税ライン | 本人 | 改正前100万円→改正後110万円 |
| 123万円 | 配偶者控除・扶養控除の上限 | 扶養する側 | 改正前103万円→改正後123万円 |
| 130万円 | 社会保険の壁(一般) | 本人 | 変更なし(2026年4月から判定方法変更) |
| 150万円 | 特定親族特別控除の上限(19〜22歳) | 扶養する側 | 新設 |
| 160万円 | 配偶者特別控除の満額ライン | 扶養する側 | 改正前150万円→改正後160万円 |
| 160万円 | 本人の所得税非課税ライン(2025年分) | 本人 | 2025年のみ適用(年収200万円以下対象) |
| 178万円 | 本人の所得税非課税ライン(2026年分〜) | 本人 | 2026年1月から適用(年収665万円以下対象) |
| 201万円 | 配偶者特別控除の上限 | 扶養する側 | 変更なし |
重要な区別:123万円の壁と178万円の壁
123万円の壁
- 配偶者や子どもの年収がこれを超えると、扶養している側(親や配偶者)が配偶者控除・扶養控除を受けられなくなる
- 世帯全体の税負担が増える
178万円の壁
- 本人の年収がこれまでなら所得税がかからない(年収665万円以下の人)
- 本人の手取りが増える
例:大学生の子どもが年収130万円でアルバイトをした場合
- 本人:所得税はかからない(178万円以下)
- 親:扶養控除は受けられない(123万円超)→親の税負担が増える
重要: 社会保険の壁(106万円、130万円)は税制改正の影響を受けず、変更はありません。
出典: 野村総合研究所「178万円までの年収の壁引き上げで合意」、時事通信「年収の壁『178万円』」
実務での注意点
年末調整での対応(2025年12月)
令和7年分の年末調整では、改正により新たに扶養控除等の対象となった親族等がいないか確認する必要があります。
注意すべき点
- 新しい申告書の使用
- 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という1枚で4つの申告ができる様式に変更
- 扶養親族の所得確認
- 年収123万円までは扶養控除の対象
- 19~22歳の親族は150万円まで特定親族特別控除の対象
- 配偶者の所得確認
- 年収123万円までは配偶者控除の対象
- 年収160万円までは配偶者特別控除の満額適用
社会保険との関係
税制上の扶養と社会保険上の扶養は別制度です。
税制上の扶養(2025年)
- 年収123万円以下
社会保険上の扶養
- 年収130万円以下(一般)
- 年収106万円以下(従業員51人以上の企業で週20時間以上勤務の場合)
106万円の壁が撤廃されても、130万円の壁は依然として存在します。社会保険の壁を超えると、扶養から外れて自身で社会保険に加入する必要があり、手取り収入が一時的に減少する可能性があります。
2026年4月からの社会保険の判定方法変更
2026年4月以降は労働契約ベースで判定されるため、契約時点で130万円未満になるよう調整すれば、一時的な収入増加は扶養認定に影響しません。
変更内容
- 改正前:月収10.8万円を連続で超えると扶養解除
- 改正後:労働契約書に記載された年間収入見込みで判定
よくある質問(FAQ)
Q1. 配偶者の年収が130万円の場合、世帯全体ではどうなる?
A.
- 配偶者本人:所得税はかからない(178万円以下のため)
- 納税者本人:配偶者控除は受けられない(123万円超のため)
- 配偶者本人:社会保険料の負担が発生(130万円の壁)
世帯全体では、配偶者控除が受けられず社会保険料も発生するため、税負担と保険料負担が増加します。
Q2. 大学生の子どもが年収140万円でアルバイトをする場合は?
A.
- 子ども本人:所得税はかからない(178万円以下のため)
- 親:扶養控除は受けられないが、特定親族特別控除が受けられる(150万円以下のため)
親の税負担は増えますが、特定親族特別控除により一定の控除は維持できます。
Q3. 企業の配偶者手当はどうなる?
A. 多くの企業では配偶者手当の支給基準を103万円に設定しています。税制改正に伴い、123万円に引き上げることが予想されますが、企業によって対応が異なります。勤務先の人事部に確認してください。
出典: 名古屋総合税理士法人「123万円の壁への対応」
まとめ:控除を正しく活用するために
2025年〜2026年の税制改正により、扶養控除・配偶者控除の制度が大きく変わりました。
重要ポイント
- 制度の区別:扶養控除は配偶者以外の親族、配偶者控除は配偶者のみが対象
- 123万円の壁:扶養親族・配偶者の年収が123万円以下なら扶養控除・配偶者控除が受けられる
- 178万円の壁:年収665万円以下の人は、2026年1月から年収178万円まで所得税が非課税(本人の税金)
- 2つの壁の違い:123万円は扶養する側の控除、178万円は本人の所得税に関する基準
- 特定親族特別控除:19~22歳の親族は150万円まで控除対象に拡大
- 配偶者特別控除:満額ラインは160万円に拡大
- 社会保険の壁:106万円、130万円は変更なし(判定方法の変更あり)
最新情報の確認について
税制は頻繁に改正されるため、本記事の内容も将来変更される可能性があります。実際に控除を申請する際は、以下の公式情報源で最新情報をご確認ください。
- 国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/
- 国税庁タックスアンサー:税に関するよくある質問
- 税務署への相談:具体的な適用条件については最寄りの税務署にご相談ください
また、ご自身の状況に応じた最適な選択については、税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
記事作成日: 2025年12月23日
参考資料: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」、日本経済新聞「年収の壁178万円へ引き上げ」、野村総合研究所「178万円までの年収の壁引き上げで合意」、各種公的機関発表資料
免責事項: 本記事は2025年12月時点の情報に基づいて作成しております。税制は変更される可能性がありますので、実際の申告時には必ず最新の情報をご確認ください。個別具体的なケースについては、税理士等の専門家または税務署にご相談ください。


























年収665万円以下の納税者が対象で、納税者の約8割に相当します。